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『呼び方』g80ulKgr(別wikiへのリンク) ある日、唯が梓に切り出したこととは 添い寝?ゆいあずその2の続き PbGWsLZd 二人に下された日中5分以上の接触禁止令 『合図』 zR83kFBC(別wikiへのリンク) 唯の部屋でギターの練習をする二人 「逆襲の唯」 N5vqfhER (別wikiへのリンク) ふとした弾みで唯に浮かんだ衝動 梓「こんにちは、ってあれ?誰もいないや。でも鍵は空いてたし荷物も置いてあるし、待ってたら来る、よね」 p+R2+w6k 鯛焼きと引き換えに梓に出された要求は… 多分、あなたは気づいてないと思うけど AyNomLvY 零れた想いの言葉 片恋 MGwD/X7P(別wikiへのリンク) 届かないことを知った想いの行く先は 「ラブレターパニック!」7v2DQzmM(別wikiへのリンク) 梓が手にしたラブレターを見た唯は… 律「それじゃあな、今日はお疲れ」澪「それじゃ、また明日」 q9Zvlobj 帰り道、二人でアイス 添い寝ゆいあず合宿編 n6DYqbtP 合宿の夜、唯の練習に付き合うことにした梓 「琴吹紬の暴走」 1KSHZTXm (別wikiへのリンク) 唯梓ライフ@紬視点 添い寝ゆいあずおうち編 2hFUmMsH ある日、梓の見た夢とは… ゆいあずでばれんたいんとか OOq+qxhN 前日、憂と二人でチョコを作る唯 ある日唯は梓に呼び出された。 2e4fifqy 「中野さん、ちょっといいかな?」(リレー形式) 文化祭のライブをきっかけに人気の出た唯に梓は… 外では蝉が元気いっぱい鳴いている夏休みのある日。M9SaubWz 夏の日、二人きりの部室で梓に起きたトラブル ゆいあずでばれんたいんとかあふたぁ ◆/BV3adiQ.o 唯にチョコをもらった梓は… 「第1次ねこ大戦!」 /HvUSIH/(別wikiへのリンク) ねこになった唯先輩 「えーと、確かここら辺のはず……。あ、もうみなさん集まってる」 LwfOwgQt 軽音部皆で行くことになった花火大会で… ゆいあずで結婚後のお話とか ◆/BV3adiQ.o 唯と梓のラブラブ夫婦生活 「Moonlit Lovers」 4NZopDFL (別wikiへのリンク) 唯から梓に告げられた言葉とは 梓唯で電気あんまとか qcdJJnyu(R-18) 唯と梓の営みの一端 「Moonlit Lovers」 中編 tytJwyMy(別wikiへのリンク) 続編 「あ・・・降ってきちゃった・・・。」(リレー形式) 居残り練習をしていた梓だったが… 「Moonlit Lovers」 後編 +fhGKvre (R-18)(別wikiへのリンク) 完結編 ゆいあずで夏祭りとか ◆ BV3adiQ.o (別wikiへのリンク) 唯に夏祭りに誘われた梓 『あずにゃんの嫉妬』b5rajz9b(別wikiへのリンク) ムギの連れてきた子猫に梓は… 嫉妬あずゆい FmSaJjPA ムギの連れてきた子猫に梓は… あずにゃんに首ったけ逸話的な何か。T4UNU0vm あずにゃんにもう首ったけ、と歌われた梓は… …ムカつく…(リレー形式?) 憂の拾ってきた子猫に梓は… 「憂、おっはよー!」+WoWvjSl 朝からそわそわする唯。その理由は 「おはようございます」 CSfBeX80 いつものように挨拶する梓に唯が返した挨拶とは 拒絶 f5Xd+4O7(未完) いつものように梓に抱きつく唯、だけど… ちょっとした日常の一コマあずゆい vJH3rBFk 梓に訪れた、ほんの些細な出来事 押し倒しゆいあず…とか? 8Kbkznjf 衝動を抑えきれずに暴走する梓だったが… 膝枕ゆいあず AppZHxz3 すっかり梓の膝が定位置になってしまった唯 こんにちは、中野梓です。i1Xswz78 唯との距離感に戸惑う梓 ゆいあずでちょっとしたはぷにんぐとか EF5T1D+Y 一緒に練習する唯の様子がおかしいことに気付いた梓 「あ~ずにゃん」 t6U7ZYJP お互いのメンバー紹介文を考える二人 分からない この気持ち vw6OfFZx 自分の思いに戸惑う唯 ヘタレなあずにゃんとか LIWepyJ8 後一歩が踏み出せない梓 嫁ゆいあず CJSGaX1i 律澪の夫婦喧嘩に巻き込まれた梓は… ゆいあず、風邪ネタ qT+BuVTF 風邪を引いて休んだ唯に出された使いとは こんにちは、中野梓です。sM1uquq9 唯に翻弄される梓 「ちょっとだけって言ったのに……」 SKm6XGvy ちょっとだけの休憩のはずが… ゆいあずで帰り道とか bBqzFZqS 唯と梓の帰り道のひとコマ ギー太とゆいあず vflqH1Ly ギー太恋人宣言をした唯に、梓は なんとなくあずゆい。1BD4MtEC 綴る梓の唯への想い Tシャツゆいあず CS4v7SDV ふとした弾みで唯のTシャツを着ることになった梓 ゆいあずでゆびちゅぱとか ii9vpXAk ミカンを剥いてくれていた梓に唯は… 13話で憂なしゆいあず x2hWWjlW 13話のIf話 合体ゆいあず kfyhTLuN ある日の部室に唯と律が持ち込んだ情報とは…? アイスゆいあず QLNVTiX7 アイスを食べたがる唯に、梓は… あずゆいでにゃんにゃんとか? ZU2yBZFM 部活に遅れて来た唯は梓に抱きつかれる ゆいあず、たいやきネタ UHm5uU6l 梓にタイヤキを買って来た唯だったが… 添い寝あずゆいお部屋編 UxVtTc58 唯の部屋で二人で過ごす梓は、ふとあるものを見つけて… ゆいあずで初恋話とか /A5PukQT 初恋について語り合う二人だったが… こんにちは、中野梓です。xI70NOeS タイヤキ好きの梓に、唯が確認したこととは… 唯「ぐ~…」 WChg0Otq 眠る唯に、梓は… 「唯先輩、そろそろ帰りましょう」 i4B5ymfC 唯が中々帰りたがらない理由とは… 片想いあずにゃん 3QxVxWve 思いを募らせる梓は… ある放課後の部室、私と唯先輩は二人きりで、他の先輩たちが来るのを待っていた。ZaeDs5pF 恋に興味を持つ唯に、梓は… 無自覚無意識 EC8L5ru1 梓のキャラソンを聞いた純の質問に梓は… 純「梓ってさぁ、唯先輩のこと好きなの?」 cA+k0PI5 純の質問の意図とは…そして梓と唯は… 唯「はぁ、ふぅ…も、もうやめてよあずにゃん…」 wrfaQqL5 唯の胸を揉み続ける梓、その理由とは ゆいあず、あったかネタ oC76zyXt 寒がろうとしない梓に、唯が仕掛けた悪戯は… 憂「いらっしゃい梓ちゃん、あがって?」 qwPxADol 唯のお見舞いに平沢家を訪れた梓 ウメネタ sVqThXO7 届かないと知りつつ止められない想い
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唯「このきんつば美味しぃねー」モグモグ 梓「和菓子に紅茶って意外と合いますねー」モグモグ 澪「うっ……」 紬「澪ちゃん、どうかした?」 澪「な、なんでもないよ」 紬「そう? それならいいけど」 この際だからはっきり言ってしまおう。 ムギは性格が悪い。 今だって、私にだけ苦い紅茶をいれておいて、白々しいやりとりをする。 二ヶ月ほど前、私は律に告白した。 しかしあっさり断られてしまった。 「澪のことは大切だと思ってるけど、女の子に恋愛感情は持てない」という簡潔な返答。 告白することを軽音部のみんなに伝えていたから、振られたことも周知の事実になってしまった。 そこまではいい。 だけどその一ヶ月後、律の机で自慰をしているのをムギに見られてしまったのだ。 それからというもの、私はムギの言いなりだ。 「いい加減にりっちゃんのことは諦めて私を見て」というのがムギの言い分だ。 自慰をしているのを見られた後、私は首根っこを捕まれ、ムギにキスされた。 ムギのことを恋愛対象として見たことはなかったけど、好きだと言われて悪い気はしなかった。 だけど、それからというもの、私が律のことを考えている度、意地悪をするようになった。 今回の紅茶だってそのひとつだ。 私が律を見てぼーっとしてたから、こんな苦い紅茶をいれたのだ。 紬「じゃじゃーん。今日はもうひとつお菓子をもってきました?」 唯「なになにー?」 紬「とらやのどら焼きなの?」 あっ、私が前に食べたいって言ってやつだ……。 律「……うん。皮がもっちりしてて、餡もしっかりしてて普通に美味いな」 梓「ええ、正統派どら焼きって感じがします」 澪「……美味しい」 このようにムギは私が食べたいといってものを学校に持ってくるようになった。 お客さんからもらったものではなく、自分で買ったものだろう。 正直、ちょっと嬉しい。 唯「なにこれおいし~。ムギちゃん大好き」 紬「///」 あっ、唯に大好きと言われて照れてる……。 帰り道のこと。 紬「嫉妬してくれたの?」 澪「そんなんじゃない」 紬「なぁんだ……」 澪「でも不公平じゃないか」 紬「じゃあ、今度から唯ちゃんに『大好き』って言われても照れないようにするね」 澪「……」 なんだこれ。 これじゃあまるで私がムギに嫉妬してるみたいじゃないか。 ……面白くない。 紬「ごめんね」 澪「なんでムギが謝るんだ」 紬「なんとなく、かな」 澪「はぁ……」 紬「ねぇ、澪ちゃん。今日はどうする?」 最近、部活が終わってからムギと遊びに行く事が多い。 こうやってムギが誘ってくるからだけど、提案についつい乗ってしまう私もいる。 澪「今日は……」 財布の中にボーリングの半額券があるのを思い出す。 そういえばムギ、ボーリングやってみたいって言ってたっけ……。 澪「ボーリングなんてどうだ?」 紬「ボーリング!!?」 澪「うん。どうかな」 紬「行く行く! 澪ちゃん大好き!!」 澪「じゃあ行こうか」 紬「うんっ!」 ムギは性格が悪い。その考えを訂正するつもりはない。 だけど、嫌いにはなれない。 ボーリング場はお客さんでいっぱいで、店員さんに20分待ってくださいと言われた。 だけど実際には40分も待つことになったんだ。 でも退屈はしなかった。ムギがいたおかげだ。 ムギはとても上手に私の話を聞いてくれる。 こういうところは律と全然違うんだ。 私は、律に対してなかなか素直になれないんだけど、ムギに対しては素直になれる。 梓や和と話してる時に近いかもしれない。 でも、それとも、少しだけ違う気がする。 梓や和は対等な友達って感じだけど、ムギはなんと言えばいいのかな……そう、ママみたいな感じがする。 何を話しても大丈夫、そんな気がするんだ。 紬「澪ちゃん?」 澪「……」 紬「澪ちゃん!!」 澪「ど、どうかした?」 紬「考え込んでたみたいだったから」 澪「ちょっと考え事をしてたんだ」 紬「そう。それならいいけど……」 澪「……律のことを考えてたとは思わないんだ?」 ちょっとだけムギに意地悪がしてみたくて、こんな言葉が飛び出した。 だけど、やっぱりムギは私より上手だった。 紬「う?ん。私のこと考えてたんじゃない?」 澪「えっ」 紬「そんな気がしたの~」 澪「……実はそうなんだ」 紬「本当に私のこと考えてくれてたんだ」 澪「うん。ムギってママみたいだなって」 紬「お母さん? 私が?」 澪「うん。ムギにはなんでも話せる気がするんだ」 紬「……そっか」 澪「……ムギ?」 ちょっとムギが寂しそうな顔をした気がした。 理由を聞こうと思ったら、店員さんに遮られてしまった。 やっとレーンが空いたみたいだ。 澪「ムギははじめてなんだよな。じゃあ、まずは私が投げるよ」 紬「澪ちゃんがんばって?」 澪「それっ」 投げたボールはピンに向かってまっすぐ向かっていき――ピンをなぎ倒した。 紬「一本だけ残っちゃった」 澪「じゃあ二投目」 紬「すごい、あたった!!」 澪「よしっ、スペアだ」 紬「スペア?」 澪「二回投げて全部のピンを倒すこと、一回で倒すと――」 紬「あっ、それ知ってる! ストライクね!!」 澪「うん、そうだよ」 紬「次は私の番でいいのかな?」 澪「うん」 紬「えいっ」 ムギの投げたボールは勢い良く転がっていき、端っこのピンを倒した。 紬「これはどうなのかしら?」 澪「二本倒れたみたいだな。初めてならこんなもんじゃないか」 紬「そう? じゃあもう一回行くね」 澪「がんばれ」 紬「えいっ!!」 ボールは勢い良く転がっていった。……斜めに。 もちろんガーターになってしまう。 紬「澪ちゃん……」 澪「まぁ、初めてだからなぁ」 紬「どうすればいいのかな」 澪「うーん。ちょっと私の投げ方を見てくれる?」 紬「うん」 私はボールを投げる。狙い通りの場所にボールは転がり、見事ストライクになった。 紬「凄い凄い!!」 澪「ああ、上手くいったよ。で、見ててくれた?」 紬「うん。投げる前に腕を後ろに大きく振ってたね」 紬「ちゃんと見ると、澪ちゃんすっごくかっこよかったよ」 澪「そ、そうかな」 紬「うん」 澪「じゃあ、見ててあげるからムギ、投げてみてよ」 ムギは私の真似をして、大きく後ろに腕を振り上げてボールを投げた。 しかし、またガーター。 紬「……あれっ」 澪「うーん」 紬「やっぱりいきなり上手にはならないのかな」 澪「いや、ムギのフォームはまだ悪いところがあるんだ」 紬「えっ」 澪「手を振り上げる時、ボールが放たれてから当たるまでのコースを想像するんだ」 澪「ムギの場合、振り上げる線と、投げる線が一致してない」 私は説明した後、エア投球をしてみせた。 ムギも真似をする。 紬「こんな感じかな」 澪「うん。ムギは力が強いから、どうしても強引に手の力で投げにいっちゃうんだと思う」 紬「そうかも」 澪「そこをぐっと堪えると良くなると思うよ」 紬「えいっ!!」 ムギが投げる。 私の言ったことをきちんと守ったおかげで、フォームはとても綺麗だ。 ボールはほぼ真っすぐ進み、6本のピンを倒した。 紬「やったわ! 澪ちゃん! 沢山倒れた!!」 澪「あぁ、上手くいったな」 ムギは子供のようにはしゃぐ。 あまりにも純粋に喜んでくれるから、こっちまで楽しい気分になってしまう。 澪「じゃあ次は私の番だな……」 ムギに教えてる手前上手く投げたかったところだ。 だけど、リリースする瞬間手元が狂い、ボールはあらぬ方向へ……。 澪「ガーター……」 紬「ど、どんまいです!」 澪「はぁ……かっこわるい」 紬「だけど投げてる時の澪ちゃんはかっこいいよ」 ムギが必死にフォローしてくれる。 こういうとき、愛されてるなって感じる。 正直、悪い気はしない。 それから色々あって帰り道のこと。 紬「あとちょっとで100点に届いたのに」 澪「でも初めてで92点なら凄いと思うよ」 紬「そうなの?」 澪「あぁ」 紬「そう言う澪ちゃんは122点もとっちゃったね」 澪「まぁまぁかな」 紬「師匠と呼ばせてください!!」 澪「大袈裟だよ。まぁムギは力が強いし、ちゃんと練習すればすぐに上手くなると思うよ」 紬「そうかな」 澪「そうだよ。また今度一緒にいこ」 紬「また今度、か……」 澪「ムギ?」 紬「ねぇ澪ちゃん、今日何の日か知ってる?」 澪「えっ」 ムギの思わせぶりな態度に私は考えを巡らせる。 まさかムギの誕生日……はこの前過ぎたし、ムギと出会ってから一年……でもないし。 あっ……! 紬「気づいたみたいね」 澪「あぁ、ムギにキスされてから一ヶ月か」 紬「うん。私が無理やり澪ちゃんにキスしてから一ヶ月」 澪「もうそんなに経つんだな」 紬「私ね、決めてたの」 澪「何を?」 紬「一ヶ月頑張って澪ちゃんを振り向かせられなかったらすっぱり諦めようって」 紬「澪ちゃんを縛り続けるのはやめようって」 紬「私ね、分からなくなっちゃったの」 紬「澪ちゃんは相変わらず部活の時間はりっちゃんのことばかり考えてるし」 紬「私のことは相変わらず恋愛対象外みたいだし」 紬「でも、私と遊んでるときの澪ちゃんは結構楽しそうだし」 紬「この恋をどうするべきなのか、自分じゃ分からないの」 澪「ムギ……」 紬「だから澪ちゃんに決めてもらいたいなって」 紬「このまま澪ちゃんのことを好きでいていいか、諦めるべきか」 紬「もちろん諦めたくなんてないけど……」 紬「澪ちゃんが諦めずにりっちゃんにアタックするつもりなら、私は邪魔になるだけだと思うから」 澪「……」 ムギの告白に私はしばらく沈黙した。 ちょっと意外だった。 ムギはもっと恋愛に対して飄々としてて、不安や悩みとは無縁な存在だと思ってた。 彼女が私に弱みを見せたのはこれが初めてかもしれない。 私の言葉を怯えるような目で待ち続けるムギはとても小さく見えて、 ちょっとかわいいな、と思ってしまった。 私は勿体つけてから、こう言った。 澪「ムギにキスされてから面白くないことも沢山あった」 紬「……っ」 澪「でもさ、面白くないことも沢山あるけど」 澪「それでも楽しいのほうが勝ってる」 紬「本当?」 澪「あぁ、本当だ」 澪「だからムギは……いや、私がこんなこと言うのも変か」 紬「うんう。言って欲しい」 澪「……そうだな。私のこと好きでいてくれていいよ」 その言葉を聞いてムギの顔がぱぁと明るくなった。 さっきまでの不安そうな顔はどこへやら。 満面の笑顔にかわってしまった。 そして一言。 紬「澪ちゃん、大好き!!」 この時私は、ムギと付き合ってしまうのも悪くないかもしれないと思っていた。 律は振り向いてくれそうにないし、ムギと一緒の時間はとても楽しかったから。 しかしそんな甘い考えは次の日の朝、粉々に砕かれることになる。 最低かつ最高の形で。 発端は下駄箱。 登校中に偶然ムギと出会った私は、一緒に学校に来たんだ。 そして、私の下駄箱から一通の手紙が見つかった。 ただのファンレターだと思ったんだ。 だから、ムギが読みたいと言ったので、読ませてあげることにした。 ムギは最初楽しそうな顔で封を開いたけど、だんだん顔から感情が消えていったんだ。 「澪ちゃん、これ」と言って私に手紙を返してくれたときには、真っ青な顔をしていた。 文面はとても簡潔。 「放課後、屋上で待ってる。律」 私は授業中しきりに律とムギの様子を確認した。 律は平常運転だ。 ムギはほとんど感情を表に出さない。 たぶん意図的に隠しているのだろう。 律の呼び出しについて、私は様々な可能性を考えた。 悩みの相談だとか、そういう可能性も捨て切れない。 でも、普通に考えれば、ごく普通に考えれば、告白だと思う。 告白されたことで、恋愛対象じゃなかった人が恋愛対象になる。 少女漫画によくある展開。 最近の律を思い出す。 そんな素振りなんて全く見せたことなかったのに……。 必死に私に対する感情を押し殺している律を想像すると、ますます律のことが愛おしくなった。 でも、律の告白を受ける前に私はやらなきゃいけないことがある。 だから放課後、律に会う前にムギを部室に呼び出した。 2
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あずにゃんへ 今度の夏祭り、久しぶりに軽音部の皆で行くって約束でしたが、何でも、澪ちゃんがどうしてもりっちゃんと二人で行きたいと言ってるらしくて、集合は三人になりました。二人は今おアツいから、許してあげてね。 昨日唯先輩から送られてきた一通のメール。その最下に書かれていた待ち合わせ場所を三度反芻して、私は家を出ました。今日がその夏祭り当日。先輩方が卒業して以来、初めての再会です。夏休みの間はずっとこっちにいてくれるからいつでも会えるとはいえ、それでも再開初日というのは嬉しいような気恥ずかしいような、不思議な気分です。 夕方六時のチャイムが鳴る頃には、青空に赤い影がぼんやり滲んで、じいじいと耳をつんざくような蝉時雨も、まるで川の流れのように滑らかな音色になる、そんな時期になりました。 風も僅かながらそよそよと穏やかに流れていて、心地良い暑さが夏の終わりを、ぼんやりと連想させました。 川を越え信号を渡り歩くことおよそ十分。曲がり角を抜けた所、遠目に先輩たちの姿を確かめることが出来ました。 「あっ、おーい! あずにゃーん!」そう私が気付くや否や、唯先輩も私に気付いたらしく、こちらを向いて、手を広げながら駆け寄ってきました。 あぁ、懐かしいなぁ。唯先輩はいつも私と会えば、真っ先に駆け寄って抱き着いてきていました。しかし、今日の問屋は高めの為替。何故なら唯先輩と私の距離は、遠目と言うほどに離れているわけで…… 「これだけ離れてて、かわせないわけがないです!」 とはいえ、今身体をズラすにはいささかタイミングが早すぎて、もうちょっと近づかせないことには、唯先輩が対応できてしまいます。もうちょっと近づいてもらわないと。もうちょっと、もうちょっと…… 「梓ちゃん、久しぶりね~」 「わっ!?」 突然背後から話しかけられ、思わず後ろを振り向きました。声の通り、そこにはムギ先輩がいました。しかし、一体いつから背後に……? 「もう、ビックリしましたよムギ先輩」 「あらあら、ごめんなさい」 「……あの、どうして少し距離を置くんですか?」 「だってここがベストスポットだもの」 「ベスト……?」 言ってる意味はすぐに分かりました。 「あずにゃん久しぶり~! ずっと会いたかったよ!」 「うにゃあっ!?」 いつの間に距離を埋めた唯先輩が、後ろから思いっ切り抱き着いてきたのですから。 「半年ぶりのあずにゃん分だ~! お肌のモチモチもあったかさも変わんないねえ」 「や、やめてください唯先輩ぃ!」 そうやって言う唯先輩も、やっぱり半年前と何も変わらない。でも半年の月日が流れていたことは確かなだけに、すっかり免疫の無くなった私の心臓は、途端にばくばくと早鐘を打ちだしまして…… 「ム、ムギ先輩、助けてくださ」 「半年ぶりの唯梓分……! あぁ、どんどん癒されていくわ!」 「それどころじゃないご様子で……」 結局、これまでの空いた穴を埋めるように、私は唯先輩に思う存分味わされたのでした。 「もう。頬ずりまでしたんですから、人前でくっつくのはダメですよ」 「えぇ~。あずにゃんは手厳しいなぁ……」 唯先輩がそう不服そうに呟くのを、隣でムギ先輩が慰めていました。 ……後ろを歩いているお陰で、離れた後でも足が震えてるのはバレてない、と思いたいです。 「それにしても、あずにゃんが何も変わってなくて良かったよ~。反応は前より可愛くなってたけど」 「う、うるさいです。……でも、唯先輩もムギ先輩も、お変わりないようで良かったです」 「あ、でもねあずにゃん。ムギちゃんは大学生になってからたくさんバイト始めたんだよ」 「え、そうなんですか!?」 ムギ先輩を見ると、そうなのよ~とこくんと頷き、 「社会勉強をしたくてね。レジ打ちとか古本屋さんの棚整理とか、色々始めたのよ」 「いくつも掛け持ちしてるんですか、スゴいですムギ先輩!」 「褒めてもお茶は出ないわよ~」 スゴいと言われて、ムギ先輩はとても嬉しそうでした。お金に不自由なんてしないのに、自ら進んで働くなんて、ムギ先輩は人がよく出来ています。 「後ね、澪ちゃんとりっちゃんは別のサークルにも入ったんだよ。二人とも同じ『しいた』同好会なんだって」 「……角度同好会とは、かなりマニアックな集まりですね」 「ぷぷっ。あずにゃん、知ったかぶっちゃダメだよ~」 ムカッ。確かにダメ元で言いましたけど……。 唯先輩は得意気に続けます。 「あずにゃん、『しいた』っていうのはね、この詩のどんな所がいいかを調べたり、実際に作って見せ合いっこする所なんだよ」 「……唯先輩、その同好会、『しいた』じゃなくて、『しいか』だったりしません?」 「ほぇ?」 ムギ先輩の方を見ると、うんうんと二度首肯してくれました。 「……ま、この位すぐピンときますよ。先輩とは違って」 「あずにゃんが見下した! しどい… …」 「自業自得じゃないですか」 唯先輩がよよ、と泣き崩れるフリをしました。 「しかし、澪先輩はともかく、律先輩もそこに入ったんですね。意外っていうか……」 そう言うと、二人は示し合わせたかのように顔を見合わせて、ふふふと意味深に笑いました。 「何かあったんですか?」 「うふふ、そこにも健気なドラマがあるのよ。初めは澪ちゃんが、もっと詩の勉強をしたいってそのサークルに入ったのだけど、それを律ちゃんが聞いたら、その日の内に律ちゃんも入っちゃったの。『澪のポエムが暴走したらマズい』とか『人見知りが暴走して気まずくなった時の為に』って言ってたけど……」 「りっちゃんも素直じゃないよねぇ。二人のことはちゅーの一件で皆知ってるのに」 ねー、とまたまた示し合わせたように、二人が言いました。 「あの、私だけ話がついていけてないんですけど……」 そう言うと、二人の動きがぎくっと静止しました。 「あ、あれ、あずにゃん、何も知らない?」 「思い当たる節はありませんけど……」 「そ、そういえば、梓ちゃんはあの場にいなかったわね」 「澪ちゃんの寮に遊びに行った時のことだもんね。どうしよ……」 「他の人には絶対言うなって言われてるけど、でも梓ちゃんだし別に……」 何をひそひそ話してるんだろう……? そう思っていると、どこからともなく古典風な笛や太鼓の乾いた音色が聞こえてきました。きっとお神輿が担がれ始めたのでしょう。 「お祭り、始まったみたいですね 「あ、ほ、ほんとだっ! 早く行こうよっ、ね、ねね!」 「そ、そうね。私も久しぶりだし、ちょっとでも長く見ていたいわ!」 「ささ、早く行こあずにゃん!」 「そこまで急かさなくても……」 結局さっきの話題は何だったんだろう、と少し気になりはしましたが、程なく気にならなくなりました。 私だってお祭り前の訳ない興奮を覚えないはずはなく、殊に二人の先輩と再会して懐かしさの渦中にいたのもあって、一刻も早く屋台の群れに入りたい気持ちの方が勝りました。ひょっとしたら、この中で一番私が、今日というこの日を楽しみにしていたのかもしれません。 夕方のふわふわした暖かさが街へ溶け出したからでしょうか、薄灰色だった雲は目を射差すような橙色に染まり、その日光と盆提灯、屋台からこぼれた白色蛍光が混ざり合って、その光景はまるで夢や思い出の一シーンのように、全景がぼんやり滲んだ、とても幻想的な風景でした。 「あずにゃん、たい焼き食べる?」 「ありがとうございま……って、いつの間にそんなに買ったんですか!?」 気付けば唯先輩は持てるだけの食べ物を買ったという風体で、さながら食べ物の着ぐるみをまとっているかのようになっていました。 「まま、好きなの選んでよ。たこ焼きたい焼きさいきょう焼き、フライドポテトにスーパーポテトもあるよ」 「豊富ですね……」 最後のは商標的に訴えられたりしないでしょうか? 「じゃあ、たい焼きを一つ」 「あいまいど! お嬢ちゃん可愛いからタダね!」 「誰ですか」 そう言って受け取った一尾のたい焼き。紙ごしでも伝わる温かさは、屋台から貰った出来上がりも同然の温もりでした。 ……もしかして、私が食べると思って、最後に買ってくれたのかな……? 「はむっ……。いつもより甘い気がします」 「ほんと? 買ってよかったぁ」 食べているのは私なのに、まるで自分事のように喜ぶのを見て、思わず私も笑ってしまいました。 たい焼きを食べ終わる頃には、唯先輩の手元にはりんごあめしか残っていませんでした。食べている最中にムギ先輩にも譲っていたのですが、それにしたって尋常じゃないスピードです。 「あずにゃん、そんなにじーっと見てどうしたの?」 「一瞬で食べ物が消えてたらじーっと見たくもなります」 そう言っても唯先輩は依然、小首を傾げて、自分の口元手元に目線をやっていました。 「あっ、分かった! りんごあめも食べたいんだ。欲しがりさんめ~」 見当違いもいいとこです。 「しょうがないなぁ~。はい」 「……はい?」 「私のアメあげるよあずにゃん。二人で分けっこしよ?」 「なっ…………!?」 とっさに私へ差し出しているアメに目を落としました。形はあまり崩れていませんが、反対側の輪郭はもうしなっと曲がり、所々が濡れて妖しい光を放っていました。いや、この濡れてるのって、もしかしなくても……! 「い、いらないです! 唯先輩の分が減っちゃうじゃないですか!」 「気にしないよ~。寧ろ食べきれるか不安だったから、あずにゃんに食べてもらえたらありがたいなぁ」 拒むどころか、大義名分が出来てしまいました。 ど、どうしよう……。でも唯先輩が困ってるって言うなら、助けてあげるべきだよね……? そう、これはあくまで人助けなんです。あくまで唯先輩を助けるために…… 「あ、ムギちゃん。リンゴあめ食べる?」 「いいの? じゃあお言葉に甘えて~」 「あっ……」 悩んでいる間に、あめはムギ先輩の口に入っていき…… 「はい、あずにゃん」 そうしてムギ先輩を経てから渡されたリンゴあめは、何の躊躇いもなく食べることが出来ました。感謝の気持ち半分、勿体ないことをされた気持ち半分で、私はムギ先輩を見つめました。 「たくさん食べたし次は遊ぼうよ!」 「もう、ちょっとは休みましょうよ」 「ダメだよ~。お祭りは無駄なく遊ばないと」 ふんすと鼻を鳴らして、唯先輩はゲームの屋台がある左の小路へと入っていきました。 「もう、唯先輩は相変わらずですね」 「そうねぇ。でも、梓ちゃんがいるから、っていうのもあると思うわ」 「私?」 ムギ先輩は頷きました。 「唯ちゃん、梓ちゃんと会えるのをすごく楽しみにしてたもの。久しぶりにあずにゃんに会える! って事あるごとに言ってたのよ」 「……どうせ、ひっつく相手がいなくて寂しがってただけですよ」 「うふふ、そうね」 そう言うと、雑踏の前から唯先輩の呼ぶ声が聞こえました。 「あずにゃんムギちゃん、人で溢れちゃってるよー……」 唯先輩が退いてきた先では、隙間も無いほどの人の群れ。ちょうど近くで神輿の掛け声が聞こえるので、きっとそのせいでごった返してしまっているのでしょう。 「これを抜けるのは大変そうね……」 人混みを一目見て、ムギ先輩はそう呟きました。 「う……」 自然、前に進む足が固まってしまいます。どうしよう。もしはぐれちゃったら、二度と唯先輩と会えないような……。折角、折角また会えたのに…… あーずーにゃん」 ふわっと、手に温もりが重なったような気がして、見ると唯先輩が、私の右手をすっぽりと包んでいました。 「これならはぐれないかなぁ、って思って……。ダメだったかな」 そう言って唯先輩ははにかむように笑いました。さっきの不安なんて霞にしてしまうような、優しい、照れくさそうな笑顔。固まった身体が徐々にほぐれていく気がしました。 「……私と会いたがってた、って聞きましたから。特別です」 そう言って、より一層手を握る力を強めました。 「えへへ、ありがとあずにゃん。あずにゃんは優しいね」 「……優しいもんですか」 「優しいよ~っ」 ……どうせ鋭いなら、私の不甲斐ない気持ちも、見抜いてくれたらいいのにな。 「じゃ、行くよ。離れないようにしっかり握っててね」 私はそっと頷いて、それを合図にゆっくりと歩き始めます。もう一つの手で唯先輩の手を掴もうか少し迷って、その手で後ろ髪の片尾をふいと払いました。 「ふぅ、どうにか抜け出せましたね」 「はぐれなくて良かったぁ……。でもムギちゃん、ごめんね、繋ぐ手の余りがなくって」 「大丈夫よ。私には百合の磁力があるもの。二人とは絶対に離れないわ」 「? 綺麗な磁力だねぇ」 人混みを脱した直後だと言うのに、ムギ先輩の呼吸も表情も、一切崩れていませんでした。 「あっ、ムギ~! 唯と梓も!」 一息ついた所で景色が開けると、偶然にも、眼前に律先輩が現れました。 「なんだ、結局放課後ティータイムは一つに集まる運命なんだな」 「運命だなんてっ……。りっちゃんロマンティック~」 「はは、澪の癖があたしにも移っちゃったみたい……」 律先輩は照れ笑いをして頭をかきました。 「そういえば澪ちゃんは?」 「あぁ、澪なら……」 そこで言葉を切り、後ろの方を指さします。澪先輩は、屋台をじっと睨んだまま、何かを投げるようなポージングで固まっていました。実際何かを手に持っているようで、それは…… 「あれ、輪投げですか?」 「そっ。だるま落としの方が簡単だって言ったのに、だるまが落ちんのは演技が悪いって聞かなくて」 そう言ってる内に、澪先輩がさっと手首をスナップさせました。輪っかは手を離れ、屋台の陰に隠れその所在は知れぬ所となりましたが、澪先輩の強張った表情が解けたと思うと次にはがっくりとうなだれて、 「外したな」 「外したね」 「そんなに欲しい物があったのかしら」 「財布と電話を出さないでくださいムギ先輩」 やがて澪先輩が、がっくりとしたままこちらへ来ました。 「律ぅ……輪っかは完全に入ってなくちゃダメだってぇ……」 「あー、私もそれで神のカード貰えなかったなぁ」 帰って来た澪先輩は、律先輩の肩にしがみついてそうぼやきます。一方の律先輩はそんな澪先輩の頭を優しく叩いてあげていて……あれ、あれ。 「あの二人、あんなに距離近かったですっけ……」 「……隠すつもりもないみたいだし、もう言った方がいいよね」 「そうねぇ。あのね梓ちゃん、今二人はアツアツなのよ~」 「アツアツ? まぁあれだけ近かったら暑そうですけど……って、唯先輩! なんでそんな可愛いものを慈しむような目で見るんですか!?」 「いや~あずにゃんは初いのぉ、純粋だのぉ。そのまま大人にならないでおくんなまし~」 「だから何キャラなんですかってば」 「もうすぐ花火だって! 折角だから五人で見ようぜ!」 澪のお礼参りと行くか~! という鶴の一声で始まった屋台巡りも一通り堪能した後、またまた律先輩の鶴の一声で、花火の見える場所まで移動することになりました。前列の唯先輩達の会話を手持ちぶさたに聞いていたら、 「ぶつ、ぶつ……」 「み、澪先輩……?」 一緒に後ろを歩いていた澪先輩が心なしか、いや明らかにどんよりした様相で歩いていました。 「あぁ、梓。いや、皆とこうしてまた集まれたのは嬉しいんだけど、今年こそ律と二人で夏祭りに行こうって意気込んでたから、ちょっと複雑な気持ちで……」 苦笑いをする澪先輩の気持ちが何となく分かるような気がしました。それと同時に、とても意外な気がしました。 私の知る澪先輩は、こうやって心にひっかかるような、何となく分かる微妙な気持ちを、自然な会話の流れで口に出来るような人ではなかったはずです。 「澪先輩は、大学生になってから変わりましたね」 「そ、そうかな?」 「そうですよ」ふとさっきのやり取りを思い出して、「特に律先輩関係は、前よりずっと積極的じゃないですか。何かあったんですか?」 「!? べ、別に何もない! 何もないぞ!」 慌てて手を振って否定する澪先輩でしたが、何か思い直したように、照れくさそうに頬をかきました。 「……いや、うん。あった。ほんとは。」 「ですよね! 澪先輩と律先輩、今までの幼馴染って感じよりもっと深い関係になってるような……」 「わーっ! それ以上はダメだぁ!!」 澪先輩は真っ赤になって私の口を押えました。 「……というより、十年一緒にいた今までが変わらなさすぎたんだよ」 紅潮しきった頬を掌で押えて、澪先輩は続けます。 「でも勢いとはいえ、変えるきっかけが出来た。そのチャンスを逃したくなくてさ、もう少し自然に近づいてみよう、素直になれるよう頑張ってみようって思って」 最近までは凄く恥ずかしかったけどね。とおずおず付け加えます。 「……皆、新しい環境になって、変わっているんですね」 そう呟いた時、お祭りの人混みに飛び込む前にした近況報告をふと思い出しました。 ムギ先輩も律先輩も、澪先輩も変わっていく。成長。それを喜ぶのは至極当然な感情であるはずなのに、皆が私の知らない所で変わっていく。それがとても寂しくてしょうがない。 いつか皆、葉桜が紅く染まっていくように、私の知らない先輩達となってしまうのでしょうか。あの優しくてほんわかと温かい唯先輩も、もしかしたらきっと……嫌。そんなの、絶対嫌だ……! 身体が震えそうになっていることに気付いて、私は慌てて考えを薙ぎ払いました。よそう、こんなのただの気の迷いだ。一人で考えるから変な穴にハマるんだ。私と澪先輩はよく似ている。変わりたいと思えるきっかけを訊けたら、きっとこんなモヤモヤもすぐ晴れてくれる。 「……澪先輩」そう思うが早いか、言葉のまとまらない内に、私は澪先輩の名前を呼んでいました。 「? どうした?」 「あの、みお、澪先輩は……」 それから先の言葉が舌をつかず、澪先輩は首を傾げて私の言葉を待ちます。 「あの、澪先輩はどうして……!」 何でもいいから何か言ってしまおう。後で補足を入れたらいい、そう思い声を出しました。が、 「おーい! 着いたよーっ」 そう決心した瞬間、唯先輩が大きな声で私たちに呼びかけました。 「ラッキー! ちょうど橋の端っこになったぞー!」 「りっちゃん、それは寒いよ……」 「わざと言ったんじゃないやい」 そう言う内に、前を歩いていた先輩達の歩みが止まりました。ちょうど、何の妨げもなく花火を一望できる場所です。 「ごめん梓、何か言った?」澪先輩が再び私に尋ねます。 「…………花火なら、二人きりで見られるんじゃないですか?」 「……! そうだなっ。おーい、律~!」 クールなイメージと相反して、うきうきと音の出そうなステップで律先輩の元へ向かって行きました。 「言わなくてよかった……」折角コンプレックスを払拭しようと頑張ってるのに、私の気の迷いで足を止まらせては申し訳が立ちません。自分の悩みを人に丸投げなんてしては、解決なんて夢のまた夢です。 「……チャンス、かぁ」 その一語が、余計な重みを持ってのしかかってくるような気がしました。 もし私に変わるチャンスが訪れても、それを受け入れることが出来るだろうか。 ……ただ一人変わらずにいてくれている唯先輩にも、もしその日が訪れたら、私は笑って見送らなければならないのだろうか…… 「あーずにゃん」 「わっ」 物憂げに星を見ていたら、空っぽになっていた右隣に、いつの間にか唯先輩がやってきていました。 「良かったぁ。一人で見に行っちゃうのかと思ったよ」 「そんなことしませんよ。花火は誰かと見た方が良いに決まってます」 「そうだよね。私もあずにゃんと見る花火が、一番綺麗に見える気がするよ」 「わ、私は別に唯先輩と、とは言ってないです!」 心を見透かされたような気がして、一瞬ヒヤっとしました。お神輿近くの時といい、唯先輩はその時の気持ちをズバッと見透かしてくるくせに、それがどんな意味を持っているかには酷く鈍感なのがズルいです。いっそそこまでバレてくれたら……なんていうのは贅沢な話だよね。 二人とも無言のまま、花火は刻一刻と迫っていきます。心の中で手持ちぶさたを言い訳に、唯先輩の横顔を眺めました。 「……唯先輩は変わりませんね」 「えぇ~そうかなぁ。私、大学生になったんだよ?」 「じゃあ何か変わったんですか?」 「えーっと……アイスを三口で食べれるようになった」 「あ、それはちょっとスゴいかも……」 憎まれ口を叩きながら、内心ほっとしている自分がいました。 「……あずにゃん、がっかりした?」 唯先輩が不安げに私の方を覗き見ました。 「……何言ってるんですか。唯先輩はその方が良いです。唯先輩は、大学生になっても、ずっとそのままの方が良いです」 つとめて明るいイントネーションで呟いたつもりでしたが、自信はありません。 「あずにゃんがそう言ってくれるなら嬉しいよ」 唯先輩はほっとため息をついて笑いました。 「私さ、ちょっと不安だったんだ。ムギちゃんはバイトを始めて、りっちゃんも澪ちゃんも他にやりたいことを一緒に始めて、私だけ何もかも高校生のままで、それでいいのかな、って。でも、あずにゃんがそのままで良いって言ってくれるのなら、それだけで安心だよ」 「唯先輩……」 それでも、少ししょんぼりしている唯先輩を見ていたら、いてもたってもいられませんでした。 「……きっと唯先輩はまだチャンスが来てないだけです。前に進みたいと思う、その気持ち一つだけで十分素晴らしいです!」 少なくとも、時間に背中を押されて、ただ転ばないように前へ足を出しているだけの私なんかより、ずっと、ずっと…… 「……あずにゃん、ありがとっ!」 「ぎゃふっ!?」 ぎゅっとまた抱き締められました。さっきは確かめる余裕が無かったけど、唯先輩から伝わるのは懐かしい温かさ。とても幸せな、だけど何故か切ない温もりでした。 「もう、離してくださいってばぁ」 「ダメだよあずにゃ~ん。花火が始まるまでだよっ」 そう言うや否や、どこかのスピーカーからざらざらした女の人の声が、後五分で花火が上がることを告げに来ました。 「あずにゃん、もうすぐ花火が上がるって!」 パッと唯先輩の身体が離れました。 「……始まるまでって言ったのに」 「? 何か言った?」 「な、何も言ってないです!」 ほとんど無意識にそう呟いていました。……参ったなぁ。本当に唯先輩への耐性が無くなっちゃったみたい。 花火のしらせはやがて群衆のざわめきに変わり、それが最高潮になった瞬間、一つの大きな花にまとまり、ドンとお腹に響く音と共に空へ打ち上げられました。赤や黄色、緑や青、めいめいの花が咲いては消え、でも夜空を空白のままにしないよう、次々連なって昇っていきました。 時には二つの輪が半分以上重なり合い、混じって派手な円模様と、多色混合の彩り豊かな火花が散り、かと思えば次の瞬間、二輪はどんどん離れて行き、ついには壁でも出来てしまったかのように、妙な距離が出来てしまいました。 あぁ、もっと近づけたなら鮮やかな景色になるのに。寄せては返す花火の距離がもどかしくて、もっと、もっと右に行けたなら……。と思いながら、くい、くいと身体を右に傾けていたら、こつん、と右手が何かにぶつかってしまいました。何が当たったんだろうと右を向いた時、唯先輩と目が合いました。 「あっ、ごめんなさい唯先輩」邪魔をしちゃったな、とすぐ悟りました。 そう言うと、唯先輩はくしゃっと顔を崩して、さりげなく、まるでさっきからそこにあったかのように、自分の左手を、私の右手の中へ滑り込ませていきました。 「これなら邪魔にならないよっ」 無垢な笑顔で私にそう言いました。 私は返事代わりに、うつむくように頷いただけでした。 それでも唯先輩は満足げに笑って、再び夜空に目をやりました。私もつられて顔を上げると、右腕にとん、と唯先輩の肩がもたれかかってきました。 「あずにゃん」 そう呼びかけられなかったら、私はまた横を向いて、何をしてるんですか!? なんて身構えたかもしれません。ただ、そんないつも通りを過ごすには、唯先輩の仕草が、私に語りかける、真剣な響き故に小さくなってしまった声が、それが私にしか聞こえない奇跡みたいな状況が、あまりに特別過ぎました。 「……どうしましたか、唯先輩」 空を見上げたままそう尋ねました。 「あずにゃん、私、やりたいことを見つけたよ」 ほら、こうして良かった。その一言に思わず強張った横顔は、花火が昇る今ならきっと、唯先輩に見えていないでしょう。 「私、ここに戻って来て、あずにゃんとこうやって一緒に夏祭りを楽しんで、ちょっと分かった気がするんだ。変わらなかったのは、やりたいことをもう既に見つけてるからじゃないのかな、って。でもそれを始める引き金が、まだ私に無かっただけなんじゃないかのかなって。あずにゃん。私はもっとギターをやりたい! 放課後ティータイムとしてだけじゃなくて、もっと、もっと!」 どどどん、と一段大きな音がしました。でも、その花火がどれだけ立派だったのか、私は知る由もありませんでした。だって…… 「だからあずにゃん! 大学生になったら、私と二人で、一緒にギターをしてください!」 その瞬間、唯先輩は私の手を両手に包んで、まるで告白まがいなことを大真面目に言うのですから…… 「な、なな、何をいきなり言うんですかぁ!?」 突然の途方もない誘いを受け入れられる度量も無く、とうとう我慢できず悪い癖が出てしまいました。でも、 「…………唯、先輩……」 慌てふためいた拍子に揺れた身体も、唯先輩にがっちりと包まれた右手だけは微動だにしませんでした。 「あずにゃん、お願い……」 真剣だけど、どこか甘えんぼで哀れっぽい口ぶりと表情。こんな顔されて、私にどうこう出来るはずなんてないわけで…… 「……もう、唯先輩は勝手です。私の都合なんて知らんぷりであずにゃんあずにゃん、って……」 「あぅ……」 唯先輩の両手がびくっと引っ込んだ気がしました。違う、こんなのが私の気持ちじゃないのに……。唯先輩が勝手なら、私だってよっぽどワガママだ。 ……でも、同じワガママなら、背伸びでも屈みでもして唯先輩と目線を合わせることだって出来るはずだ。 私は息を一つ吸って、言いました。 「……半年です」 「ほえ?」 「私の受験が終わって、唯先輩と同じ大学に入って、その時にも唯先輩の気持ちが変わらないなら、また誘ってください。……私の気持ちは、絶対に変わりませんから」 唯先輩の顔に、パッと笑顔の花が咲きました。 「あずにゃん、ありがと~!」 唯先輩がまた抱き着きました。 「ゆ、唯先輩、こんなに人がいる所でっ……」 「だいじょーぶ、皆花火に夢中で見てないよ」 「……もう」 それもそうだなぁ、って納得してしまった私は、余程重症なのでしょう。 変わること、先に進むこと。それはまだどうしようもなく怖い。大切な物がふいになってしまう位なら、ずっと今のままで居続けていたい。 でも、これでまた四年の間は先輩の背中を追いかけていられる。答えは唯先輩と一緒に見つけていこう。見た事のない世界をたくさん見せてくれた、この人とならきっと見つけ出せる。 もしその道程で何かが変わってしまっても、その目の前に変わらず唯先輩がいてくれるのなら、大事な物は、そのままでいてくれる。そうに決まってる。 三度、私は空を見上げました。花火は終盤に差しかかったのか、間髪入れず次々打ち上がり空に咲き乱れて行きます。色とりどりの、輪郭がぼやけた花が空高く咲き乱れ、その下では菜種色の炎が控えめな花を咲かせ、水面にたゆたう葉のようにはらはらと花弁を散らしていくのでした。そこに無粋な余白など、どこにもありはしませんでした。 夏が終われば、何かが変わる。そんな移ろう季節の真ん中は、全てが鮮やかに輝いていました。 あとがき ここまでお付き合い下さり、ありがとうございました。楽しんでいただけたら幸いです。 読みづらい文章だったらごめんなさい。これが今のところの、文章力の限界です。 次に投稿する時は、もっと文章力や見せ方を向上させてきます。 再度、ここまでお付き合い下さり、ありがとうございました! そしてあずにゃん、お誕生日おめでとう! 戻る
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次の日 音楽室 澪「この通りだ!許してくれ律!」 律「お、おい!なんだよ澪!頭あげろって!!」 澪「昨日の私はどうかしてたよ!平民どもを見下すなんて!本当にごめん!」 律「わかったから!わかったから頭あげてくれ!」 澪「許してくれるのか・・?」 律「もちろんだよ。あたしら親友じゃないかよ!」 澪「律・・・ありがとう・・・」 律「それに私はしってたんだぞ?お前がベース置いていった時からきっと帰ってくるって!」 澪(あ、忘れてたよベース・・・) 律「まぁ、これからも変わらずによろしくな」 澪「もちろんだよ。」 唯「これでけいおん部も元通りだねー!」 梓「唯先輩・・・実はそれが元通りじゃないんです・・・」 唯「えっどういうこと?」 梓「じつは・・・ムギ先輩ー!出てきてください、ムギ先輩ー!」 ムギ「は、はじめまして・・・」 唯「は・・・」 澪「はじめまして・・・?」 律「実はムギが記憶喪失になってしまったんだよ・・・」 ムギ「・・・」 唯「そんな・・・私のこと覚えてないの!?」 ムギ「コクリ」 澪「私は!?私の存在感なら忘れたくても忘れられるわけが・・・」 ムギ「すみません・・・」 唯「そんな・・・来週から修学旅行なのに・・・こんな状態ってかわいそうすぎるよ・・・」 澪「キーボードは!?弾けるのか!?」 律「キーボードは弾けたよ。基本は日常生活には支障は無い。」 澪「よかった・・・ムギのキーボードが欠けたらHTTじゃなくなるしな・・・」 澪「修学旅行までに治るといいな」 ムギ「ありがとうございます。」 唯「無理しちゃ駄目だよ?病人なんだから・・・」 そして部活終了後 唯「帰るかー!」 澪「あ、ごめん。私と律はちょっと残るからさ、先にかえっててくれ」 律(え・・・///) 梓「わかりました。」 唯「じゃあムギちゃんは私たちが送ってくね!」 ガチャ 律「な、なんだよ・・・いきなり残るなんて聞いてないぞっ?」 澪「私昨日からずっと律に悪いことしちゃったなって思っててさ・・・」 律「だ、だからあれはもういいって!!許したからさ!!」 澪「私律を傷つけちゃって・・・どうやって責任取ろうか・・・ずっと考えてて・・・」 律「せ、責任なんて!!何言ってんだよ!友達だろ?」 澪「だったら、私のほんのちょっとの気持ちを受け取ってほしいんだ。」 律(え・・・///) 澪「受け取ってくれるか?」 律「気持ちって・・・なんだよ・・・?それによる!!」 ぎゅっ 澪がそっと律の手を握る 律「澪・・・///」 澪「・・・ありがとう。受け取ってくれて。」 律の手には1枚の小切手が握られていた。 律「なんだこれ・・・」 律(紙?ラブレターでもなさそうだし・・・) 澪「私のほんの気持ちだ!」エヘン 小切手「¥30,000,000」 律「・・・」 澪「大好きだよ、律。」 律「お前・・・」 澪「ん?」 律「やっぱりまったく反省してないな・・・土下座の時から平民どもとかいったりおかしいとは思ってたけど・・・」 澪「な、何言ってんだよ律・・・そ、そうか!足らなかったんだな!だ、大丈夫!こうやって0を一つ足せば・・・ああぁぁ!!『,』がズレたぁぁ!!」 律「だいたいベース忘れてく時点で軽音楽に未練ないの見え見えなのに・・・」 律「なんで戻って来たんだよ?」 澪「み、みんなでけいおん部・・・やりたくて・・・」ウルウル 律「おうおう。これからは履歴書の特技の欄に“嘘泣き”って書けるなぁ澪ちゃん!」 澪「・・・」 澪「ギロ…」 律「ひっ」 澪「まったく・・・友達だと思ってたのにさ・・・」 澪は手にある小切手をビリビリと破り捨てた。 澪「どうしても仲良くできないのか?」 律「ああ、無理だね。」 澪「ムギがあんな状態なのに・・・友達の事もう少し考えたらどうだ!」 律「答えはさっき言ったぞ。こんな成金ごめんだね!」 澪「・・・」 澪「成金だとォ・・・?」ギロ 律「ひっ」 澪「お前・・・私に向かって成金だと・・・」 律「じ、実際そうだろ!宝くじ当てただけじゃねえか!!」 澪「大富豪の私に向かってどの口がそんな事をほざきやがったアアアア!?」 澪「この私が土下座までしてっていうのに!つけあがるな!私の傷ついた心を返せ!」 澪「謝罪しろ謝罪!!」 律「お前ちょっとおかしいだろ!?怒りを通り越して心配になってきたぞ・・・」 澪「平民のくせに私をキチ呼ばわりするなあああ!!」 律「お、おちつけ澪!別にキチ呼ばわりなんかしてないって!」 澪「したじゃないか・・・私をキチ扱いした目で見たじゃないか・・・」 律「きのせい!それは気の所為だ!まずは落ちつけ!な?」 澪「はぁ・・・はぁ・・・」 律「お前は大金を手にしておかしくなってるだけだ。だからまず冷静になってくれ。」 澪「おい、今私のこと池沼だって思っただろ。」 律「思ってないから!それに池沼は唯一人で十分d」 ガララ 唯「・・・」 律「唯!?」 唯「りっちゃん・・・今何の話をしてたのかな?」 律「えっと・・・その・・・」 カチッ 『思ってないから!それに池沼は唯一人で十分d』 カチッ 律「ボイスレコーダーだって・・・?澪、お前なんてもの持ち歩いてんだよ・・・」 澪「私会話を24時間記録してるんだ。」 律「なんだよそれ・・・完全に人間不信じゃんかよ・・・」 澪「あ、私は唯の悪口言ってないぞ。こいつで証明できる。1億賭ける」 唯「やっぱり私の悪口言ってたんだね、りっちゃん・・・」 律「えっと唯、これは誤解なんだ!言葉のあやというか・・・」 唯「なにが言葉のあやだよ!りっちゃん私の事池沼だって思ってたんだ!」 律「いや、ち、違・・・」 澪「違くないだろ。いい加減認めろよ、律。」 律「澪・・・」 唯「・・・」 律「唯!信じてくれ!私お前のこと本当に友達だって思ってるんだよ!?」 澪「“思ってた”の間違いじゃないの?」 律「澪ォ・・・」ギリッ 澪「なんだよその目は。」 律「一回信じた私が馬鹿だったよ。お前はもう完全に芯まで腐っちまってたみたいだな・・・!」 澪「ほざけ、平民が!」 唯「もうけいおん部もおしまいだね・・・人間関係ぐっちゃぐちゃだよ・・・」 澪「一部の狂った奴のせいでな。」 律「あぁ、それに関しては同感だな・・・!痛ぇっ!」 唯「あずにゃんがかわいそうだよ・・・」 律「それにも同感だな・・・!痛ぇぇ!!」 そして、修学旅行の日がやってきました! 57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/05/04(火) 21 23 14.73 ID Gnyi7ZPWO 律は何を痛がってるんだ? 57 指を踏まれてます。 6
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紬「ということで唯ちゃん、私たちの恋の展開も一気にスピードアップさせましょう!」 唯「それはいいけどなんで服を脱ぐの!?」 紬「もうちゅーとか手をつなぐだけじゃだめなのよ!一気に最後までいっちゃいましょう!」 唯「さ、最後って…きゃー!///」 『けいおん!!』今後の放送予定 8話 既成事実! 9話 決意! 10話 婚約! 11話 結婚式! 最終回 唯ムギ! 番外編 出産! 戻る
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1 紬としずか ※けいおんの木下しずかちゃんの事です。 信代「日本一のクラス!」 1 信代和 ※けいおんの中島信代の事です。 2010/10/24 http //yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1287930311/ 戻る 名前 コメント すべてのコメントを見る 信代×和はねぇ 最後に和が信代にさらりと告白するシーンもどこをどう解釈していいやら。 内容は感動も少し入っていいにはいいんだけど、想像の余地が難しいですな。 しずか×ムギは良かったです。 -- (名無しさん) 2014-04-23 02 12 23 しずか可愛いなぁw この二人は席近いから妄想膨らむわw -- (名無しさん) 2012-10-09 20 06 12 ムギしずかは良いとして、信代和というのは… 和をモブと組ませるなら姫子とだろうな。 -- (名無しさん) 2012-07-01 22 41 29 のぶよって単語見るだけで吹き出すようになった...死にたい -- (涙) 2011-12-13 13 24 16 最近 信代が出るだけで笑ってしまう… すまん信代 -- (匿名希望) 2011-12-04 22 30 41 しずかにのぶよというとどうしてもドラえもんを思い出してしまう -- (名無しさん) 2011-07-07 16 53 31 しずかかわいいな。 信代の方も素直によかった。 だが、モブは姫子、いちご、エリ、アカネ、しずか、信代以外は名前と顔が一致しない。 -- (名無しさん) 2011-05-13 14 30 32 信代アネキ…… -- (名無しさん) 2011-05-13 10 53 30 しずか可愛い -- (名無しさん) 2011-04-10 04 30 10 信代和とかキングオブ誰得だろ… まあ良かったけど -- (名無しさん) 2010-11-17 01 25 11
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第7話「救出劇!」 ある晴れた日曜日、唯ちゃんとりっちゃんは公園で楽しくキャッチボールをしていました。 律「よーし!唯、いくぞ! それっ」シュッ 唯「ほいっ!」パシッ 律「うぅん…、今のは我ながらなかなか良い球が投げられたぜ!」 唯「……こんな球で満足するなんてりっちゃんもまだまだだね。あまちゃんだよ」 律「な、なんだとー!? じゃあ唯、私のを上回るボールを投げてみろよ!」 唯「おまかせください! 私がお手本を見せてあげるね!」フンス 律「くそー、偉そうに……。できるもんならやってみやがれ!」 唯「…じゃあいっくよー! 必殺!スーパージャイロナックルボール!!!」ツルッ 唯「…あっ」 律「っておいっ!!どこに投げてんだよ!」 ヒューン…… ポトッ 唯「あっ……あの家の塀の中に入っちゃった!!」 律「おいいいいいいい」 律「とりあえずボール取ってこいよ!」 唯「えー……。 あ、あのボールはもう諦めない?」 律「やだよ!てかあれ私のボールだし!!」 唯「だってー!あぁいう家にボール入れちゃうと……」 唯『すみませーん。ボール落としちゃいましたー。…てへっ』 家主『……』プルプル 唯『あ、あのぅ……』 家主『バッカモーン!!公園でボール遊びはしちゃダメだといつも言っとるだろうが!! ガミガミガミガミ……』 唯『ひぃいいいいい』 唯「…ってなるよきっと!」 律「いつの時代の話だよ!!」 唯「でも、今の時代もそういう人がいないとは限らないでしょ? だからやめておこうよ……」 律「いーやーだー!あのボール結構高かったんだぞ! ていうか大体、今時そんな雷親父いるわけないだろ」 唯「そんなこと言ってるならりっちゃんがボール取ってくればいいじゃん!」 律「は、はぁ!?なんで私が!? ボール投げ込んだのは唯だろ!」 唯「だってりっちゃんは雷親父なんていないとと思ってるんでしょ? だったら怖いものもないんだしりっちゃんが取ってきてくれてもいいじゃん」 律「まぁそうだけどさぁ……」 唯「おねがーい。今度アイスおごるからさー…」 律「……2段重ねなら考えてやってもいいぜ」 唯「う……。わ、分かったよ。背に腹はかえられないよ」 律「よーし、契約成立だな! まったく、今の時代そんな怖い人なんているはずないのに……。ラッキーだぜ」 唯「そんなこと言って油断してるときっとカミナリ落とされるよ……」ブルブル 律「ないない。心配するな、唯!私がスマートに取ってきてやるからな! そこで待ってなさい」 唯「あぁ……りっちゃん!無事に帰ってこれるよう祈ってるよ……」 律「大げさだなぁ……。じゃあ行ってくるな」 唯「りっちゃん!ご武運を!!」 律「まったく。唯もビビりすぎだよなー、たかが庭に入ったボールを取ってくるだけだろうに」スタスタ 律「……この家だな。 うひゃー、結構な豪邸だなー…。まぁいいや、ちょっと失礼しますよ」キィーッ 律「そーっと、そーっと……」チラッ 番犬「……」ギロッ 律「え」 番犬「バウバウバウ!!!」 律「!? う、うわぁああああ!!?」ダッ バウバウバウ!!! ウワァアアア 唯「!? これは…りっちゃんの声!?た、大変だ!」ダッ 唯「りっちゃん!!だ、大丈夫!?」タタタッ 律「ハァ……、ハァ……。あ、唯…。と、突然犬にほえられて……」 唯「だから油断するなって言ったでしょ!油断大敵だよ!」 律「だ、ってまさかこんな大きな犬がいるとは思わなくって……」 番犬「……」ギロッ 律「しかもまだこっち見てるし……」 唯「きっとりっちゃんのことが好きなんじゃない?」 律「縁起でもないこと言うなよ……」 律「でもどうしよう…。コイツがいる限りボール取れそうにないな…」 唯「…そうだね。怖いしねー」 律「とりあえずここから一旦出て作戦を練り直すか」 五分後 唯律「うーん……」 紬「……あら?唯ちゃんとりっちゃんじゃない!唯ちゃーん!りっちゃーん!」ブンブン 唯「あ!ムギちゃんだ!」 紬「どうしたの?こんな道端で……? 考え事?」スタスタ 律「あー……ムギ、実はかくかくしかじかってことがあって……」 紬「……つまり大きな犬がいてボールが取りにいけなくて困ってるってことね?」 律「そういうこと。 ムギー、何かいい案ないー?」 紬「うーん、そうねぇ……」 紬「……あっ! いいこと思いついたわ!!唯ちゃん、りっちゃん!!ちょっと待ってて!」ダッ 唯「!? む、ムギちゃん!? ……もの凄いスピードで行っちゃった…」 律「ムギの奴 急にどうしたんだ…?」 数分後 紬「おまたせー」タタタッ 唯「あ!ムギちゃんおかえりー! …急にムギちゃん走りだしたからちょっとびっくりしたよ」 紬「ごめんね、唯ちゃん? でもいいもの買ってきたわよ!」 律「……コンビニの袋だな。何買ってきたんだ?」 紬「えぇ。ちょっとそこのコンビニで最高級品質のビーフジャーキーを買ってきたわ!!」 律「……え?最高品質……?」 唯「!!なるほど! それをエサにして犬がビーフジャーキーを食べてるスキにボールを取に行くって作戦だね!」 紬「そういうことよ!唯ちゃんはもの分かりがいいわねー♪」ナデナデ 唯「えへへへ///」 律「おいちょっと待て。ムギ、そのビーフジャーキー一体いくらしたんだ……?」 紬「えーと、5000円くらいだったかしら」 唯「!? ご、ごせんえん!?」 律「高っ!! い、いいのかそんな高級なモノ使っちまって!」 紬「だってあそこのコンビニにはこの種類のしか売ってなかったから……」 律「品揃え悪っ!!なんだそのコンビニ! 全然コンビニエンスじゃねぇし!!」 紬「…まぁそんなことよりも!今はボールを取らなきゃ、でしょ?値段なんか気にしてる場合じゃないわ」 唯「そうだよりっちゃん!今はボールを取るほうが大事だよ!」 律「そ、そうだよな! ……そうなのか?」 紬「とにかく、やってみましょ?」 律「わ、分かった。じゃあまずは私が入るからムギは後方から ビーフジャーキーで上手く犬の気を引いてくれ。頼んだぞ!」 紬「分かりました隊長!!」ビシィッ 律「よし、行くぞ……」スタスタ 番犬「……!」ギロッ 唯「ひぃっ!き、気づかれちゃったよ!」 律「よし、今だ!! ムギ、ビーフジャーキーをっ!!」 紬「分かったわ!! それっ!」ポイッ 番犬「! ワンワン!!」ダッ 番犬「〜♪」ムシャムシャ 律「よしっ! 今だ!!」ダッ 律「えーと、ボール、ボール……。どこだー?」キョロキョロ 番犬2「…………」ギロッ 律「……えっ」 番犬2「バウバウバウ!!!」 律「うわぁっ!!!も、もう一匹いたのかよ!!」 唯「ちょっ……!りっちゃん大丈夫!?」 律「はぁ、 はぁ……。び、びっくりした……」 番犬2「グルルルル……」 唯「まさか2匹目がいたなんて……。しかももう一匹の犬より大きくて怖いよぉ……」 律「と、とりあえず離脱するぞ唯隊員!」ダッ 唯「アイアイサー!」ダッ 番犬2「バウバウバウ!!!」 ・・・・・・ 紬「ど、どうだった!?」ドキドキ 唯「だめだったよ、ムギちゃん……」 律「まさかもう一匹いるとは……」 唯「ムギちゃん、もうビーフジャーキーは残ってないの?」 紬「ごめんなさい。一つしか買っていなくって……」 唯「そっかー……。残念……」 紬「ま、またコンビニに行って買ってこようか?」 律「いやそれは流石にムギに申し訳ないよ。一個5000円だし……。別の方法を考えよう」 唯「ちょっと待って。お金はりっちゃんが出せばいいんじゃない?」 律「……唯隊員、私にそんな大金が出せると思うか? てか何度も言うけどボール投げ込んだのはお前だろ」 唯「そういえばそうだったね……。じゃあさっさと別の方法を考えようか!」 律「…ほんと、調子のいい奴だな」 唯「そうかな? えへへ……」 律「ほめてはないけどな」 唯「……でもだからと言ってほかにいい方法あるのかなー? ここはやっぱりムギちゃんにもう一回コンビニに行ってもらった方が……」 センパーイ・・・ 紬「あら?どこからか聞き覚えのある声が……?」 梓「唯先輩!律先輩!ムギ先輩!!」タタタッ 唯「あ、あずにゃん!?」 梓「はい。唯先輩こんにちは。 どうしたんですか、こんな道端で皆さん?遊んでいるわけでもなさそうですし」 律「あー、梓……。 実はかくかくしかじかってことがあってな……」 梓「……つまり、ボールがそこの家の庭に入ってしまって、番犬がいて ボールを取るのに苦労してるってことですね?」 唯「そういうこと! ……ねぇあずにゃーん。何かいい作戦ないー?」 梓「作戦って……。 そんなこと言ってるからいつまでたってもボール取れないんですよ。 ここは家の人にきちんと謝ってからボールを取りにいくべきです!」 唯「えー!?そ、そんな危険な……!!」 梓「どこが危険なんですか! 悪いことをしたらきちんと謝ることは人として当然のことでしょう!」 律「そ、そうだけど……」 梓「なんでそんなにイヤそうなんですか! ただ謝るだけじゃないですか」 律「でも、なんかその……怒られたらいやだし」 梓「悪いことしたんだから怒られるのは当然でしょう!もうインターホン押しちゃいますよ」ピンポーン 律「ちょっ!待てはやまるn」 律「……あぁ、終わった……。何もかも…」 梓「んな大げさn」インターホン「Hello?」 律梓「え」 唯「!? え、英語っ!?」 紬「が、外国人さんが住んでいるのかしら……?」 梓「ちょっ、えっ!? せ、先輩方どうしましょう!?」 律「……頑張れ、梓」 唯「応援してるよ、あずにゃん」 紬「梓ちゃんならきっと話せるわ」 梓「って何にもフォローしてくれないんですか!? てかなんで私が話すことになってるんですか!」 律「まぁ、言いだしっぺだし……」 唯「あと流れ的に?」 梓「なんですか流れって!!」 梓「……あ!!そうだ確かムギ先輩は海外とかにもよく行かれるんですよね!?それなら結構英語も」紬「No」 梓「あ、はいそうですよねすみません嘘ですごめんなさい」 梓「……はぁー、分かりましたよ。私が頑張ってお話してみます」 紬「頑張ってー!梓ちゃーん!」 唯「フレー、フレー!あーずーにゃん!!」 律「梓ー!いったれー!」 梓(き、緊張してきたー!)ドキドキ 梓「は、はろー……?」 インターホン「Who is it please?What is your business here?」 梓「び、びじねす……? あ、あの、えと…………。」 梓「ソ、ソーリー!!アイドントスピークイングリッシュウェル!! sumimasendeshitaッ!!」ダッ 紬「あ、梓ちゃーん!!」 2
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1 2009/9/14 http //yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1252855513/ 戻る 名前 コメント すべてのコメントを見る うむ。これは良い話しだな。 -- (名無しさん) 2020-04-17 16 11 40 短いけどこれは名作だなぁ〜 -- (名無しさん) 2017-09-24 00 45 19 メインキャラクター 平沢唯 田井中律 琴吹紬 中野梓 なんだ、ちゃんと全員部室に揃ってるじゃん‼ -- (名無しさん) 2016-02-04 02 06 26 誰か忘れていると思ったら顧問のさわちゃんを忘れていたんだ‼ -- (名無しさん) 2015-12-26 01 55 00 勉強になった! -- (名無しさん) 2015-12-25 23 47 06 ヘアピン、カチューシャ、眉毛、黒髪ロング、みんないるじゃないか -- (名無しさん) 2015-02-23 10 42 36 好き -- (名無しさん) 2014-12-16 20 35 00 これは良いけいおん!SS -- (名無しさん) 2014-12-16 11 21 00 誰か忘れて(ry 作者さんおちゅ -- (名無しさん) 2014-12-15 11 10 05 ん?誰か忘れている様な…… と思ったけどちゃんと唯・律・梓・紬の四人全員が出ていたから私の気のせいだったみたい。 なにはともあれ作者さんおちゅでした。 -- (名無しさん) 2014-12-13 05 34 06
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第一章 大学合格お祝いパーティ 三月上旬、まだ肌寒い季節。 桜が丘高校軽音楽部に所属するバンド、「放課後ティータイム」のメンバーと、メンバー共通の友人である和は、唯の自宅で「大学合格お祝いパーティ」を開いていた。 メンバーの三年生の4人はそれぞれが志望校に合格しており、悩みのない春だった。 ドラムの田井中律(たいなかりつ)は短大の保育科に。 キーボードの琴吹紬(ことぶきつむぎ)は全国有数のお嬢様女子大の外国語学部に。 ベースの秋山澪(あきやまみお)は、有名私大の文学部に。 真鍋和(まなべのどか)も澪と同じ大学の理学部に合格していた。 そして、なんと! 軽音部のムードメーカー?であるギター&ボーカルの平沢唯(ひらさわゆい)は、国立大学の経済学部に合格していた。 (まさか!) その事実を知ったとき、澪は自分の耳を疑った。 唯が自分の大学よりも偏差値が高い国立大学に合格したことに納得出来なかった。 単純に悔しいだけではない、納得出来ないのだ。 (どうしてあんなボーッとして遊び惚けていた娘が・・・) 唯は「たまたまだよ~。ヤマが当たっただけだよ!てへへへ」 と照れておどけてみせた。 それがまた澪のプライドにチクチクと触った。 パーティの食事も終わり、唯の妹の憂(うい)がかいがいしく後片付けをしている。 澪「憂ちゃん、いつもいつもごめんな。」 憂「そんな、全然平気です。みなさんが家に来てくれるのがうれしくて。」 律「しかし・・・」 律が唯の背後に回った。 律「唯~!ほんっっとにお前って時々、信じられないことするよなぁ!国立大合格ってどんな手品使ったんだよ!?」 おどけて、唯にチョークスリーパーをかます。 唯「ギブギブ」 唯は顔を真っ赤にして律の腕をタップしている。 紬「唯ちゃん、すごいです~」 と朗らかな笑顔で祝福する紬。 メンバーの中でただ一人の二年生、ギターの中野梓(なかのあずさ)は 梓「唯先輩って、やっぱり分からない人ですね~。でも、おめでとうございます!」 と目を白黒させていた。 唯「あずにゃん、ありがとね~」 と、いつも以上に梓に抱きつき、梓を辟易とさせる唯。 和はその様子を横目で見ていたが、 和「唯は本気で集中するとすごいことするけど、今回だけは驚いたわ」 と、言いながら、たいして驚いた様子もなく、ワイングラスを口に運んでいた。 ちなみに、このワインはアルコール度数1%未満の子供でも呑める種類のもので、メンバーがこの「大学合格お祝いパーティ」のために用意したものだ。 律も紬も和も、梓も心から唯を祝福していたし、同時に各々を同じように祝福し合っていた。 しかし、澪だけは素直に唯を祝福出来ないでいた。 唯は最初、軽音部の活動に支障を来す程に勉強が出来なかった。 赤点をとっては澪に泣きついてきて、一夜漬けでテスト勉強につきあったものだ。 そして追試でなんとか合格点をとって、無事にクラブ活動に戻って来るというのがパターンであった。 たまに危うく追試を逃れることがあっても、決まってそれはぎりぎりの低得点だった。 唯のもともとの親友であった和はそんな唯をとっくに見放していて、勉強を教えようとはしなかった。 まぁ、実際の所は和は唯の自立を促していたのであろうけども。 しかし、澪の場合は唯を放っておくわけにはいかなかった。 唯が赤点をとると唯の部活動を禁止されてしまうのだ。 ギターボーカルの唯がいなければちゃんとした練習が出来ない。 軽音部のメンバーとしては唯に勉強を教えざるを得なかったのだ。 それでも一度、甘やかしてはいけないと、唯を見放したことがある。 その時、唯は一学年下の妹の憂に勉強を見てもらうという離れ業でテストを切り抜けてみせた。 (憂ちゃんは天才か?しかし、まったく、唯は・・・!) 澪は他人ごとながら唯の将来が心配になったものだ。 唯はそんな澪の心情は全く分からない様子で、相変わらずテストがあると、 唯「澪ちゃ~ん!」 と、泣きついてくる。 (いい加減にしろっ!) と思うこともあったが憎めない唯の顔を見いるうちに、 (やれやれ) と、結局、一夜漬けに付き合うことになるのだった。 兆しはあった。 本試験で12点しか取れなかったはずの唯が、追試では100点をとったことがあるのだ。 (極端な子!でも、やれば出来るんだ!) 澪は驚いたが、むしろ澪が教えたことで高得点をとってくれたことがうれしかった。 それがあろうことか、二年生の冬の期末テストで、一気に澪と唯の成績が逆転してしまったのだ。 しかも全教科において唯の得点が澪を上回るという澪にとっては信じ難い事態だった。 澪はその夏、毎日有名な進学塾の夏期講習に通っていた。 憂によると、 憂「おねーちゃん(唯)は家でごろごろしてましたよ。」 らしい。 唯はテスト前のほんの少しの時間に集中して勉強しただけだと言う。 それなのに全教科において私をいきなり上回るなんてことが・・・。 自分が重ねて来た努力を思えば、こんなに理不尽なことはないように思えた。 不覚にも澪は悔し涙を流してしまった。 しかも怒りのあまり、 澪「なんで遊びまくってた唯の方が私より成績いいんだよぉぉぉ!」 と、唯の手をギュ~っと握り潰し、唯に悲鳴を上げさせた。 信じられない。 しかし現実に、あれから澪は一度も唯の成績を上回ることが出来なかったのだ。 澪は希望していた大学に合格した。 志望校に合格することが出来たのだからそれはうれしいことのはずだ。 しかし目の前の唯は自分では届かなかった国立大学に合格している。 本人は受かるはずがないと思って受けたら、たまたまヤマが当たったと言う。 (ふざけないでよ!人の努力をなんだと思ってるの?) 澪は沸き上がる嫉妬心を自覚せざるを得なかった。 他のメンバーのように、 「唯、すごいな~!!」 なんて手放しで祝福することは出来ない。 そして、こんなことでクヨクヨしたり、嫉妬する自分自身に澪は傷ついていた。 (私は・・・情けない女だな・・・) 全員が志望校に合格したというめでたい卒業パーティの席で、澪は独り自嘲していた。 律「み~おっ!!なに暗い顔してんだよ、ったく!」 律が澪の首にしがみついてきた。 紬「澪ちゃん、今日は私がお菓子をつくってきたのよ。もらいものよりもおいしいか自信がないけど、食べてみて!」 紬が手作りのケーキを差し出す。 梓「澪さん、今度『ミッシェル』のライブいきませんか?あそこのギターとベース、すっごく上手くて参考になると思うんです。」 梓が遠慮がちに澪を誘う。 唯「ああ!私もいく~!あずにゃん、なんで私も誘ってくれないのよぉ?私だってギターだじょ?」 唯が梓に抱きつく。 唯「ね?澪ちゃん、いいよね?ね?」 唯が懇願するような目で澪を見つめる。 澪「あ、ああ、そうだな。みんなで行くか?」 和「あいかわらず澪は大人気ね。」 和が笑う。 律「なんたって澪は我が軽音部の裏の番長だからな!」 澪「誰が裏の番長だっ!誰がっ!」 律の頭にたんこぶを作ってやる。 二人の掛け合い漫才にみんながどっと笑う。 憂「じゃあ、ムギ先輩のケーキがあるんでお茶を注れますね。」 いつもの風景に澪は和み、癒された。 (私はこのみんなが大好きだ。こんな私でもみんな受け入れて、・・・その・・・好きでいてくれるんだ。 唯は頑張った。私よりも勉強が出来るんだ。それを認めて喜んであげなきゃ。これからは大学生だ。 つまらないことでうじうじしていてもしょうがない。もっと頑張ってもっと楽しく人生を充実させなきゃ。) 澪「唯。」 唯「な~に?澪ちゃん」 澪「大学合格おめでとな。」 唯「へへへ、ありがとう。澪ちゃんこそ合格おめでとう。好きな文学、思う存分出来るね。」 澪「そうだな。」 唯「私の場合はまぐれだから、勉強についていけるか心配だよ~」 (ま、まぐれって!またそんなに軽く言うっ!) 澪「ま・・・、まぐれで国立に受かるか~っ!」 唯「わぁ!澪ちゃんがキレた!」 律「唯の場合、ホントにまぐれの可能性があるから怖いけどな!」 律がどたばたに加わった。 澪の心のチクチクした部分が氷解していく。 このメンバーでいつまでもバンド活動を続けたいと思った。 軽音部は上手くまわっていたのだ。 この頃は・・・まだ。 第二章 ブッキング! 軽音部のバンド、「放課後ティータイム」は、4人が大学に入学するまでの間、校外活動することにした。 4月までは特にすることもない期間だったし、思い出作りと言う側面もあり、全員が乗り気だった。 梓は単純にライブが出来ることを喜んだ。 三年生は自由登校だったが、軽音部のメンバーは毎日のように音楽室に集まって練習していた。 澪「で、ライブハウスのブッキングはどうするの?」 律「ここは一つ、部長の私が・・・、」 澪「いやいや。律には任せられないな~。お前が手続きをさぼったせいで軽音部は何度ピンチに陥ったことか。」 唯「ブッキングって何?何?」 梓「唯先輩、ブッキングというのは、バンドがライブハウスに出演する為のスケジュールを組むことですよ」 唯「ほえ~、なんかカッコ良い言葉だね!」 律「ムギ!ムギんところの楽器店にライブハウスの情報とか張り紙してあったよな!」 澪「楽器店にはバンドやってるが人がたくさん来るからな。」 紬「そうですね、あの店の店員さんならライブハウスの情報とか詳しいかもしれませんね」 澪「よし、じゃあ今から行って、訊いてみるか。」 全員「おーっ!!」 軽音部の面々は、「いつもの楽器店」に行ってみることにした。 この「いつもの楽器店」は、桜が丘高校からほど近い繁華街の商店街の中にある。 紬の父親が経営する会社の系列店であり、軽音部のメンバーはそれをいいことに、随分無茶な値引きや、サービスをしてもらっていた。 澪は内心、 (いいのかな?ちょっと非常識過ぎやしないか?紬に悪いな~) と感じていたが、他のメンバーの無邪気な強引さにつられて自分自身も特典に預かっていた。 楽器屋の店員はさすがに事情通であった。 店員自身もバンドを組んでおり、ライブハウスに直接電話をかけてくれたり、頼み込んでくれたりした。 澪と紬が熱心に店員と話している間に、唯と律の姿は消え失せた。 梓も二人を捜しに行ったまま帰って来ない。 (ほんとにっ!) 澪「結局、私たちが全部やるんだよな、ムギ!」 紬「まぁまぁ。」 紬は困ったような笑顔で澪をなだめる。 紬「それよりも私、ライブハウスなんて初めてで、わくわくしちゃって。」 律「店員さん!これこれこれ!」 律が手に一枚のチラシを持って走り込んできた。 唯「りっちゃん隊員~っ!」 梓「もう!待って下さいよーっ!」 澪「お、お前らどうした?息を切らして」 律「澪!これ見てみろよ!」 律はチラシを澪に差し出した。 澪「いったいなんなんだよ?・・・!!」 そのチラシには地元では有名なバンドがタイバンを募集しているという情報が書かれていた。 澪「え?律・・・これは?」 律「これに応募すんだよ!会場を見てみろよ!桜が丘野外音楽堂だぜ?千人以上入る場所だよ!」 澪「ちょ、ちょっと待てよ!いきなりそんな・・・っていうか、私たちみたいなバンドがタイバンに選ばれるわけないだろう?」 唯「それが違うんだよぉ!澪ちゃんっ!!これは地元のフレッシュなバンドを発掘しようという・・・そんなありがたいイベントなんだよ!」 澪「フレッシュって・・・。私たちは一度もライブハウスで演奏したこともないんだぞ!私たちがそんな千人規模の会場でいきなり演奏しようなんて・・・! それに・・・。店員さんにお世話になって、ライブハウスが決まりそうなんだよ。ほら!この日が一番いいだろうって、もうライブハウスの人に連絡もしてあるんだ!」 律「どれどれ?よし!この日程ならそのライブハウスで校外デビューってことで弾みをつけて、どーんっと本番は桜が丘野外音楽堂という感じでいいなっ!!さっそく応募するかぁ!」 澪「ちょっと律!みんなはどうなんだよ!ム、ムギは?」 紬「そうですね。私、ピアノのコンクールで大きな会場で演奏したこともあるから大丈夫。面白そうだと思います。」 (ええ?まさかの前向き発言?) 軽音部では澪につぐ常識人だと思われる紬はたまに澪の思惑を裏切ることがあった。 もっとも澪が一方的に裏切られたと感じているだけなのだが。 澪「梓は??」 梓「う~ん、ちょっといきなりって感じはしますけど、もし出来るのならやってみたいですね!でも、たくさん応募すると思うし・・・まず選ばれないんじゃないですか?だったら応募するくらい・・・」 (うう、こちらも前向きな発言・・・。) 澪「ゆ、唯はどう思う?唯?・・・ん?」 藁をもすがるような気持ちで唯を振り返る澪。 (っていうか、いない~!!) さっきまで唯が居た場所には誰もいない。 店内を目で捜すと唯は、ずっと奥の方の打楽器コーナーでマラカスを振って遊んでいる。 (うう・・・、唯に助けを求めるなんて馬鹿だった・・・。) これは澪の推測だが、唯にとっては学校の講堂も、ライブハウスも、千人収容出来る桜が丘野外音楽堂も同じだろう。 唯は沢山の人を前にしても、まるで一人を相手しているようにリラックスして話しかける。 どこにいても何をしていても唯は唯だ。 律「店員さん!これ!応募用紙に書いておいたから、お願いしまっす!」 (っていうか、もう提出してる-!!) これもいつもの軽音部。 こんなノリに澪はず~っと振り回されてきたわけだ。 (ふぅ。まぁいいか。どうせ受かりっこないだろうし。それよりもライブハウスと日程が決まったんだ。ちゃんと練習していいライブをしなきゃな!) 澪「よし、桜が丘野外音楽堂の件はいいとして、みんな聞いてくれ!これから練習に・・・もっと・・・、あれ?」 今度はメンバー全員がいないなくなっている! 律「澪、何を演説してんだ?いくぞ~?」 声の方に目をやると、メンバーはすでに店を出るエスカレーターの中程まで上っている。 唯「澪ちゃん、お茶に行こうよ~」 紬「澪ちゃん、行きましょう。」 (はぁ~、前途多難だなこりゃ・・・。いつものことだけど。) 澪はうなだれながらみんなの後を追う。 澪「もうっ!待ってよ~。」 そして追い付く頃には、おしゃべりしながらお茶を飲んだりケーキを食べたりする時間を想像し、自然と微笑みがこぼれだしていた。 2
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787 名前:ss[sage] 投稿日:2009/07/16(木) 00 14 37 ID dRjG65p9 772に先越されちゃったけど、いいよね。 さ「みんな、いる?」 澪「あ、先生。見ての通り全員いますけど、どうしたんですか?」 さ「みんなお待ちかねの新しい衣装が出来たわよ!」 律「……誰も待ってないって」 さ「りっちゃん何か言った?」 律「何も」 梓「それで今回はどんなの作ったんですか?恥ずかしいのは嫌ですよ」 さ「よくぞ聞いてくれました。ジャーン、ロリータよ!」 律「おお……、これまたさわちゃんワールド炸裂してるな」 さ「澪ちゃんの考えるあまーい歌詞をオマージュして作ったのよ。 それじゃ、さっそく誰かに試着してもらおうかしら。 今回は……そうね、りっちゃんに頼もうっと」 律「えっ、私!?やだよ、こんなの。絶対着ないぞ」 さ「フフフ、それはどうかしら。今よ、唯ちゃん!」 唯「ラジャー、さわちゃん!」ガバッ 律「なっ!?唯、いつの間にバックに!?」 さ「よくやったわ、唯ちゃん。さあ、りっちゃん、観念なさーい」 律「やめろ!おい、澪、梓、ムギ、助けてくれ!」 澪「ゴメン。律のロリータ姿、全く想像できないから少し楽しみにしてる自分がいるんだ」 梓「確かにこんな機会がないと律先輩あんな格好絶対しませんもんね」 紬「りっちゃん、あきらめるのもひとつの勇気よ」 律「裏切ったな!うわ、やめてくれ、うわああああぁぁぁぁ……」 751 画像404の為、補完している方いらっしゃいましたら提供願います。 律「うう……、一生の恥だ……、ぜってーおかしいし!」 さ「なんだ、結構いけるじゃない」 唯「りっちゃん、かーわいいー!」 澪「おお、意外と似合うな」 梓「律先輩の新たな一面発見です」 紬(パシャ、パシャ) 律「ああ!もうやだ、着替える!あとムギ、無言で写真撮らない!」 出典 【けいおん!】田井中律はポロシャツ可愛い41【ドラム】 このSSの感想をどうぞ 名前 コメント すべてのコメントを見る 誰か画像うpキボンヌwwww -- (名無しさん) 2009-07-31 20 44 19